8.14 マクロライド系抗生物質
マクロライド系抗生物質には、エリスロマイシン(薬)(EM)、クラリスロマイシン(薬)(CAM)などがある。マクロライド系抗生物質は、ペニシリンアレルギーの患者に対してレンサ球菌、ブドウ球菌の治療のために、ペニシリン系の代用薬として用いられることがもっとも多い。エリスロマイシンはレジオネラ属、マイコプラズマ属による感染症にも適応がある。クラミジアにも投与される。静注では、静脈炎がしばしば発生する。エリスロマイシンのエストレート製剤では、成人における胆汁うっ滞性肝炎の発生が報告されている。 エリスロマイシンは、クラリスロマイシンと同様にテオフィリン(薬)、ワーファリン(薬)など、他の薬物の血中濃度を上昇させることがあり、この相互作用には十分に注意する必要がある。さらにエリスロマイシンは、テルフェナジン(薬)(商品名:トリルダン)、アステミゾール(薬)(商品名:ヒスマナール)、シサプリド(薬)(商品名:アセナリン、リサモール)の肝臓における代謝を障害し、QT時間延長と致命的な心室性不整脈を生じることがある。エリスロマイシンでは、悪心、下痢がしばしば認められる副作用である。 近年、びまん性汎細気管支炎に対して、エリスロマイシンの少量長期投与が劇的な効果をあげることが示されている。びまん性汎細気管支炎に対するエリスロマイシンの効果は、エリスロマイシンの抗菌作用によるものではなく、何らかの免疫学的作用機序や、その他の機序による効果が推測されている。中等度あるいは重症のびまん性汎細気管支炎では、注射用セフェム系抗生物質やニューキノロン剤による短期の治療の後、エリスロマイシンの少量長期投与をおこなう。軽症では、当初からエリスロマイシンの少量長期投与をおこなう。具体的には、1日400〜600mgのエリスロマイシン投与から始め、効果が続けば200mgに減量して投与を続ける。6カ月から1年間以上エリスロマイシン投与を続ける。 クラリスロマイシンは、エリスロマイシンよりもインフルエンザ菌、モラクセラ菌への有効性が高い。適応症としは、軽度から中等度の上気道・下気道感染症、皮膚・軟部組織感染症があげられる。トリ結核菌複合体やその他の非結核菌性マイコバクテリアによる感染症に有用である。透析患者では、投与量の調整が必要である。クラリスロマイシンでは消火器症状は少ない。
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薬剤名 | 透析患者投与量 | 健常人投与量 |
エリスロマイシン(EM) | 600〜1500mg/day | 600〜1500mg/day |
クラリスロマイシン(CAM) | 透析後に0.5〜1.0g | 0.5〜1.0g を 12hr毎 |