透析百科 [保管庫]

21.13  血清リン濃度(P)

血清リン濃度の標準値を4ないし6 mg/dlとする。mg/dl単位の血清リン濃度とmg/dl単位の血清Ca濃度の積が60を越えると異所性石灰化が生じやすくなる。このような場合には、その原因となっている高リン血症あるいは高Ca血症のコントロールが必要である。

高リン血症は、過剰なリン摂取、筋肉変性や溶血などの細胞崩壊による細胞内から細胞外へのリンの移動、アシドーシスに伴う細胞崩壊による細胞内から細胞外へのリンの移動、低い透析量に伴う過少なリンの除去によって生じるが、その中でも過剰なリン摂取が原因であることが圧倒的に多い。そこで高リン血症の患者では、まず食事内容の評価が必要である。

通常の食事における主な蛋白源は、魚介類および肉類であろう。図に示すように、これらの中でハムやソーセージなどの加工食品は、加工されていない素材に比べて蛋白質含有量に対するリン含有量の比率が高い。また、加工食品を多く摂取する患者は蛋白摂取量が少ない傾向がある。したがって、nPCRが0.9g/kg/日以下と低めであり、かつ充分な量のリン吸着剤を服用しているにもかかわらず血清リン濃度が高い場合には、生の肉や魚などを手間をかけて調理するのではなく、安易にハムやソーセージなどの加工食品を使用している可能性がある。また、チーズ、ヨーグルト、牛乳などの乳製品を大量に摂取している場合には、nPCRが0.9〜1.1g/kg/日と平均的であり、かつ充分な量のリン吸着剤を服用しているにもかかわらず血清リン濃度がnPCR値の割に高値を示すことが多い。食事摂取量が多いために血清リン濃度が高い場合には、血清リン濃度だけでなくnPCR値も高値を示す。

充分な食事管理、充分なKt/Vの確保、充分な量のリン吸着剤の使用にもかかわらず高リン血症を示す場合には、思わぬ民間薬や栄養食品の服用、異化亢進、細胞崩壊、アシドーシスが高リン血症の原因であることがある。

なお、日本透析医学会統計調査委員会によると、透析前血清リン濃度が7.0mg/dlを越えて高い患者でも、4.0mg/dl未満の患者でも、死亡のリスクが高い[1]。

 

 

 

文献

1.わが国の慢性透析療法の現況(1998年12月31日現在).pp.627-630,日本透析医学会, 1999

 


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