透析百科 [保管庫]

16.12 白内障

1. 白内障とは

眼に入ってきた光は、まず角膜を通り、水晶体を通過して網膜上に像を結ぶ。網膜上に結んだ像は、視神経を通って脳に伝えられ、影像として認識される。このとき、水晶体はカメラのレンズに相当し、瞳孔から入った光を屈折させて網膜上に結像させる働きをする(図)。ピント調節のための水晶体の厚みの調整は、チン小帯を介して水晶体に繋がっている毛様体筋の緊張や弛緩により行われる。

水晶体が黄白色または白色に混濁して透明性を失った状態を白内障と称する。水晶体が混濁する原因は、まだ十分には明らかになっていない。

 

 

2. 白内障の症状

白内障では、初期には視力の低下、目のかすみ、明るいところに出るとまぶしくて物が見にくい、などの症状が出現する。その他、水晶体の厚みが増すために近視が進行してメガネでの調整が困難になる、あるいは物がぼやけて二重,三重に見える、などの症状を呈することもある。

白内障が著しく進行すると、外から見ても瞳孔が白く見えるようになる。

 

 

3. 白内障の手術療法

白内障の治療の主体は手術療法である。白内障手術の現在の標準術式は、超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入である。すなわち、角膜(一般に黒目と称される部分を覆っている膜)と強膜(一般に白目と称される部分)の境目あたりを4mm程度切開し、そこから超音波発生器を有する細いチップを水晶体嚢に挿入して混濁している水晶体を乳化、吸引する。その後、水晶体が取り除かれた跡の水晶体嚢の中に人工眼内レンズを挿入・留置して手術を終了する。

術後は早ければ翌日にはかなりの視力の回復が期待できる。しかし、眼の状態が安定するのには、なお数週間以上が必要である。

白内障手術で挿入する人工眼内レンズの焦点距離はレンズごとに決まっている(自動調整機能はない)。そこで、遠くに焦点のある眼内レンズを挿入した場合には、遠方がハッキリみえるのに対し手元はボヤけることになり,逆に近くに焦点のある眼内レンズを挿入した場合には、手元がハッキリみえるのに対し遠方はボヤけることになる。どのような焦点距離の眼内レンズを挿入するかは、患者の生活環境を考慮して決定する。いずれにしても、術後は挿入した人工眼内レンズにより、適当な近視用あるいは遠視用のメガネが必要になる。

200〜300人にひとりの割り合いで眼内レンズを挿入できない患者がいる。そのような患者では、術後はすべてメガネやコンタクトレンズで視力を矯正しなければならない。

なお、白内障手術後も、血液透析中のヘパリン使用量は減量する必要がない。

 

 

4. 白内障の手術の時期

白内障の初期症状に対しては、日常生活上の工夫を行う。例えばまぶしさに対してはサングラスをかけ、また近視が進めばメガネで矯正する。白内障がさらに進行してメガネでは十分に視力を矯正できなくなったり、生活上不便だと感じることが多くなってきたら、手術を考慮する。

 

 

5. 後発白内障

白内障手術を受けた患者の多くに術後、視力の低下、あるいは光が当たると視野が白くかすむなどの、白内障の初期と似た症状が出現する。これらの症状は、眼内レンズを挿入した水晶体嚢が混濁するために生じる。術後5年の時点で、白内障手術を受けた患者の約30%に後発白内障がみられる。

後発白内障では、レーザーを用いて混濁した水晶体嚢の中心部分だけを除去する。この処置により、簡単に視力が回復する。

 

6. 点眼療法

点眼療法の有効性は未だ証明されていない。