透析百科 [保管庫]

16.13 鼻出血

1. 出血部位

鼻出血の80%以上は鼻中隔前方にあるキーゼルバッハ部位からの出血である。一般に鼻腔内では血管の分布が密である。特にキーゼルバッハ部位では血管網、血管吻合が著しい。そしてこの部位は外界に近く、いろいろな刺激を受けやすいために鼻出血の好発部位となっている。この部位からの出血には、動脈性出血と静脈性出血があるが、それぞれの頻度は同程度である。

キーゼルバッハ部位以外からの出血には、下鼻甲介後端や中鼻道などの鼻腔中部〜後部からの出血がある。これらの部位からの出血には、キーゼルバッハ部位からの出血よりも動脈性出血が多い。また、これらの部位からの出血については、血管が太い、出血点が確認しにくいなどの理由でしばしば出血量が多くなる。成人では約20〜30%がこの部位からの出血である。

 

 

2. 止血処置

 a.すでに止血している場合
診察時にすでに止血していれば、外鼻孔より出ている凝血塊を除去し、エピネフリン(薬)を浸した綿球を鼻腔に挿入し、5分ほど置いておく。

 b.キーゼルバッハ部位からの出血の場合
鼻出血では、出血が激しくないかぎり、まず出血部位はキーゼルバッハ部位であると想定して患者を座位でやや前屈ぎみにして、鼻翼を正中に向かって指で10分ないし15分間圧迫する。この際、エピネフリンを浸した綿球を鼻腔に挿入した上で鼻翼を圧迫すると、さらに効果的である。綿球は奥へ奥へと詰め込むのではなく、指で押さえる部位に集中するように詰め込む。綿球の大きさは、鼻が変形する程度(親指大)が好ましい。止血の際に患者を仰臥位にすると、血液が咽頭に落ちていき、それが胃に入る。血液が胃に入ると、嘔吐を来たし、また、高カリウム血症が生じることもある。
鼻出血がキーゼルバッハ部位から生じているのであれば、ほとんどの場合、この処置により止血する。
なお、止血剤の投与は出血中には効果が期待できず、出血後はアクセス血管の閉塞の原因ともなりうるので、原則として投与しない。

c. キーゼルバッハ部位以外からの出血の場合
以上の処置で止血しない場合、あるいは出血が激しい場合には、後鼻孔近くの動脈からの出血である可能性がある。このような場合には、早急に耳鼻科医に止血を依頼する。

 

 

3. 止血後の処置

止血後は、出血量を推測し、輸血が必要かどうか判断する。また、出血の原因が、血小板減少症、凝固因子異常、血小板機能抑制剤の投与あるいは抗凝固薬の投与ではないか、確認する。

鼻出血を頻回に繰り返す場合には耳鼻科医に診察を依頼する。


エピネフリン
  epinephrin

ボスミン Bosmin
液:0.1% 注:1mg/1mL/A
(第一製薬)


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