透析百科 [保管庫]

16.5  便秘

便秘には、結腸癌に代表されるような器質的変化によるものと、弛緩性便秘や痙攣性便秘などの機能的異常によるものとがある。まず、器質的変化による便秘(例えば、癌などによる腸管の狭窄が原因である便秘)ではないことを確認した上で、以下に示す機能的便秘の治療を行う。

弛緩性便秘は、腸管壁の興奮性の低下、腹筋力の低下、腸の蠕動運動を抑制する薬物の服用、食物繊維摂取量の不足などによって生じる。症状としては、便意、腹痛がないなど、苦痛の少ない便秘であり、便は太く固い。しばしば腹部の触診で横行結腸や下行結腸に糞便塊を触れる。透析患者の便秘には食物繊維摂取量の不足による弛緩性便秘が多い。

したがって透析患者に弛緩性便秘がみられる場合、治療の基本はカリウム含有量の少ない食物繊維の摂取量を増やすこととなる。すなわち、野菜、果物、穀類などをカリウムを除去できるような方法で調理し摂取させる。カリウムやリンを含まない透析患者用食物繊維を1日10g程度服用させるのもよい。これを3ないし4週間服用させ効果があれば治療の基本として続ける。もし、患者が便秘を来すような薬を服用しているなら、可能ならこれを減量あるいは中止する。鎮咳薬や抗コリン剤は便秘を来す。その他、カリウムイオン交換樹脂、制酸剤(アルミゲルや炭酸カルシウムなど)、降圧剤も便秘の原因となりうるが、これらの薬剤の中止は困難なことが多い。

 浸透圧下剤であるソルビトール(薬)の5g程度をベースに使用してもよい。しかし、同様に浸透圧下剤である酸化マグネシウム(薬)はマグネシウムを含んでいるので透析患者では使用しない。

 上記の治療によっても便通が改善されなければ、センナ(薬)、センノシド(薬)、大黄甘草湯(薬)、ビサコジル(薬)、ピコスルファート(薬)、フェノバリン(薬)などの大腸刺激性の下剤やシサプリド、マレイン酸トリメブチン、ネオスチグミンなどの腸蠕動を亢進させる副交感神経刺激薬を投与する。便が直腸まで到達しているのに便意を催さない場合には、ビサコジル坐薬(薬)、炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム(薬)を使用し、あるいはグリセリン浣腸をおこなう。

 日常生活では、たとえ便意がなくても毎日決まった時間にトイレへ行き排便を試みる。またその際、同時に腹部のマッサージをおこなう。

痙攣性便秘は、消化管自律神経の不安定状態から生じる、大腸、とくに下部結腸の異常緊張亢進状態と考えられる。症状としては、腹部膨満、腹痛、嘔気などの腹部症状が強く、便意があってもうまく排便しがたい。便は小さく固く、兎糞状と形容されるようにポロポロとした便であることが多い。また、便の最初に出てくる部分は固く水分に乏しいが、終わりの方の便はむしろ軟便ないしは泥状便に近い状態であることがある。腹部の触診ではときに有痛性の大腸索を触れるが、大腸に糞便塊を触れることは少ない。薬物療法としては、臭化ブチルスコポラミン(薬)、臭化ブトロピウム(薬)、臭化メペンゾラート(薬)などの大腸の過緊張を取り除く自律神経遮断剤と緩和な下剤とを併用する。マレイン酸トリメブチン(薬)は、過剰な腸蠕動を抑えるので痙攣性便秘にも使用できる。