16.14 喘息
1. 病態 喘息は、可逆性の気流制限、気道過敏性の亢進、慢性気管支炎を特徴とする病態である。 以前は、喘息を可逆性の気流制限を主体とする病態と考え、気管支拡張を治療の主目的としていた。しかし、このような治療では気道壁の肥厚を防ぐことはできなかった。
2. 診断 発作性の呼吸困難、喘鳴、咳嗽をもって喘息を疑う。そして、(1) 発作時に聴診にて呼気時に wheezing が聴取され、呼気時間が延長していること、(2) 喀痰中に好酸球が増加していること、(3) 短時間作用型 β2刺激薬吸入後に、後に述べるピークフローメーターで測定したピークフロー値(PEF)、1秒率(FEV1.0)が 15% 以上改善すること、(4) ピークフロー値の日内変動、日間変動が 20% 以上であること、(5) 血中に特異的 IgE が検出されることにより喘息と診断する。
3. 治療 喘息の薬物療法は、長期の管理を目標とするもの(コントローラー)と発作への対応を目標とするもの(リリーバー)の2つからなる。 a. 長期の管理
さて、喘息の長期管理においては、患者自身がピークフローメーターを用いて自宅で呼吸機能を評価するのが望ましい。そして、ピークフローメーターにより評価した自覚症状と呼吸機能を基に喘息の重症度を決定し、重症度に応じて薬剤を増減する段階的な治療方針を立てる。 すなわち、喘息の長期管理にあたっては、まず、表2に示すガイドラインに沿って、自覚症状とピークフロー値(PEF)および1秒率(FEV1.0)を基に重症度(ステップ1〜4)を決定する。
次に、以下の重症度別の長期管理指針に基づいて初期の治療を行う。 ステップ1 吸入β2刺激薬の頓用が週3回以上となったときにはステップ2にステップアップする。
ステップ3 吸入β2刺激薬は必要に応じて追加して使用する。しかし、追加吸入は1日3〜4回を越えないこととする。徐放性テオフィリン薬、経口、貼付長時間作用性β2刺激薬は頻発する夜間発作、日中の発作の防止に用いる。 治療初期に、上記の相当するステップの治療を行い、少なくとも3ヶ月間安全を確認してから、一つ下のステップの治療に移行することが推奨される。 なお、注意事項として、長時間作用型吸入β2刺激薬は1日2回吸入するが、単独で使用してはならず、必ず吸入ステロイド薬と併用する。また、吸入ステロイド薬の使用に伴って口腔カンジダ症が生じることがある。これは口腔内にカンジダによる白斑が生じるもので、ほとんどは吸入直後のうがいで防ぐことができる。口腔以外にも咽頭カンジダ症、喉頭カンジダ症、食道カンジダ症の見られることがある。これらはうがいでは防ぐことはできない。薬剤の変更、減量などの対処が必要となる。 b. 発作への対応 自宅での治療 急性増悪が軽度の場合(PEFで予測値の70〜80%の場合)、短時間作用性吸入β2刺激薬を2吸入行い、改善のない場合には20分後にさらに2吸入、さらに改善しなければ2吸入追加し、それでも改善しない場合、除放性テオフィリン薬を頓用するか、病院に行く。 中等度の急性増悪の場合(PEFで予測値の50〜70%の場合)には、最初の短時間作用性吸入β2刺激薬吸入時にプレドニンを30mg内服する。 外来における治療 軽症あるいは中等度の急性増悪に対しては、ステロイド薬を比較的大量に点滴する(ソルメドロールなら40〜125mg)。さらに、来院前のテオフィリン内服状況を確認した上で、ネオフィリン6〜10mlを点滴し、酸素飽和度95%以上を維持するように酸素投与を行い、喀痰の排出がない場合には座位によるスクウィージング(http://www.geocities.jp/ncn31_31/squeezing.htm)を行う。 苦しくて横になれず、動けない重症の喘息患者が来院したら、エピネフリン皮下注射(ボスミン0.1〜0.3ml)、酸素吸入、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール125mg)を点滴しながら座位のまま救急病院への搬送を考慮する。健常人ではエアロゾルを1回2噴霧、1日に4回吸入するが、腎不全では1回1噴霧、1日4回までの吸入とする。 |
≪ピーク エアーゾーン ピークマン8システム
≪短時間作用性 ■プロカテロール ■サルブタモール
≪長時間作用型
≪吸入ステロイド薬≫ ■プロピオン酸フルチカゾン
≪徐放性
≪ロイコトリエン ■モンテルカスト
≪クロモグリク酸 ≪β2刺激剤貼付薬≫
≪エピネフリン注射薬≫
≪メチルプレドニゾロン注射薬≫ |