透析百科 [保管庫]

16.10  頭痛

器質性疾患を伴わない頭痛と何らかの疾患の症候として出現する頭痛がある。

1. 器質性疾患を伴わない頭痛

器質性疾患を伴わない頭痛では神経学的検査の結果はすべて正常である。このタイプの頭痛には、(a)緊張性頭痛、(b)片頭痛、(c)群発頭痛、(d)インドメタシンに特異的に反応する頭痛などがある。
ほとんどの場合、これらのタイプの頭痛の機序は明らかではない。

 

(a)緊張性頭痛

頭痛の性質を「頭のまわりを圧迫され、あるいは締め付けられるような」と訴える。緊張性頭痛は、非拍動性であり、頸部の筋肉の緊張を伴っている。1日の後半に始まり、頭痛の強さが変動する。
長時間のうつむき姿勢による後頸筋の阻血性筋収縮が原因とされている。しかし、次に述べる他のタイプの頭痛に比べて心理的な因子の影響が大きいことから、緊張性頭痛の発症には心理的な因子も関与していると考えられる。緊張性頭痛の診断に当たっては、典型的な片頭痛の症状(悪心、嘔吐、光恐怖症、前兆)を欠いていることを確認することが必要であるが、ときには緊張性頭痛に精神的な緊張と不安、片頭痛用の症状が重なっていることもある。
治療に当たっては、ストレスがあれば、それを取り除くように工夫する。また、うつ病が隠れていないか調べる。貧血や低血圧は阻血性筋収縮の誘因になり得るので、可能ならこれらを是正する。
通常、筋弛緩薬と抗不安薬を併用する。筋弛緩薬には、塩酸エペリゾン(薬)、塩酸チザニジン(薬)、メトカルバモール(薬)、塩酸トルペリゾン(薬)、などがあり、抗不安薬にはエチゾラム(薬)、クロチアゼパム(薬)、メダゼパム(薬)、オキサゾラム(薬)、ジアゼパム(薬)などがある。

 

(b)片頭痛

片頭痛は血管性頭痛であり、発作が反復する。女性に男性の3倍多い。家族性の傾向を示す。前兆を伴わないタイプが80%を占める。ストレス、不安、月経、過激な運動、過労、睡眠不足を始めとする多くの因子により増悪するが、詳細は成書にゆずる。
片頭痛は、以下の3つのタイプに分類される。

(1)前兆を伴うタイプ

通常、視覚に関する数分間の前兆の後、あるいはこれと同時に頭痛が発生する。前兆は、視覚に関する症状ではなく、運動、感覚あるいは認知に関連する症状、あるいは精神症状のこともあり得る。

(2)前兆を伴わないタイプ

前兆を伴わないタイプの片頭痛は、4ないし72時間続き、片側性・拍動性である。頭痛の程度は、中等度ないし高度であり、通常の肉体運動でも増悪する。また、頭痛とともに、悪心および/あるいは嘔吐、光に対して「まぶしがり」(光恐怖症)や音に対する過敏(音恐怖症)を示す。このような頭痛発作が繰り返し起こる。
片頭痛の治療は薬物治療が中心であり、発作時の治療と発作の予防を目的とする治療に分けられる。

(i)片頭痛の発作時の治療
血管収縮作用のある酒石酸エルゴタミン・カフェイン合剤(薬)を投与する。酒石酸エルゴタミンは、主に便中に排泄されるが、カフェインはほとんどが尿中に排泄されるので、透析患者では体内に蓄積する傾向がある。カフェインの1日あたりの投与量は、200 mgを上限とする方が無難である。なお、カフェインは透析により急速に除去される。
具体的な投与法としては、片頭痛発作のできるだけ早い段階、前兆を伴う片頭痛では前兆が出現した段階で、酒石酸エルゴタミンにして1 mgに相当する量の合剤を投与する。効果がなければ、30分後にさらに同量を投与する。最大投与量は1日2 mg、週に2〜3回までとする。発作時に強い悪心が認められる場合には、メトクロプラミド(薬)あるいはドンペリドン(薬)を同時に服用させる。
酒石酸エルゴタミン・カフェイン合剤を、酒石酸エルゴタミン量にして合計2 mg投与しても頭痛が収まらない場合には、ジアゼパム(薬)、クロルプロマジン(薬)、スルピリド(薬)などの抗不安剤と共にインドメタシン(薬)などの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を服用させる。インドメタシンと共にメトクロプラミドを服用させると、インドメタシンの鎮痛効果が増強する。
上記の治療によっても片頭痛が軽減しない場合には、ペンタゾシン(薬)の15 mgを筋肉注射する。
なお、酒石酸エルゴタミン、カフェインのいずれも、末梢血管障害や虚血性心疾患に対しては増悪させる方向で作用することに気を付けることが必要である。

(ii)片頭痛の発作を予防するための治療
片頭痛の発作が月に3〜4回と高頻度で認められる場合や一旦発作が出現すると収まりにくい場合には、片頭痛の発作を予防する薬剤を使用する。このような薬剤には、酒石酸エルゴタミンと類似の作用をもつメシル酸ジヒドロエルゴタミン(薬)、抗セロトニン薬であるメシル酸ジメトチアジン(薬)、塩酸ジプロヘプタジン(薬)など、あるいはβ遮断剤(βブロッカー)である塩酸プロプラノロール(薬)、塩酸カルテオロール(薬)、アテノロール(薬)などが使用される。

(c)群発頭痛

群発頭痛は、眼窩部、眼窩周囲、側頭部に片側性の生ずる激しい痛みであり、男性に6倍多く、痛みのある側に流涙、眼瞼下垂、縮瞳、鼻閉、結膜充血などの自律神経障害を生じる。誘発因子にアルコール、ニトログリセリンなどがある。多くの患者は、痛みを我慢するために、背筋を伸ばして立つ。

群発頭痛の特徴は、周期的であり、連日かつ同時刻に発作が起こることである。1回の頭痛の持続は30分から3時間で1回の群発は、数日から数週間続き、数ヶ月から数年の間隔で繰り返す。

治療としては、片頭痛の場合と同様に、血管収縮作用のある酒石酸エルゴタミン・カフェイン合剤(薬)を投与する。使用法も、片頭痛の場合と同様である。さらに、100%酸素吸入、4%リドカイン点鼻注入を行う。発作が激しく、長時間続くようなら、副腎皮質ステロイド製剤や炭酸リチウム(薬)を使用する。

(d)インドメタシンに特異的に反応する頭痛

頭痛の中にはインドメタシンにのみ特異的に反応する頭痛がある。このような頭痛は、咳、くしゃみ、きばる、笑うなどの行為で出現し、あるいは「アイスピックで刺される」ような鋭い痛みを示す(ice-pick headache syndrome)。

治療としては、インドメタシン(薬)の12.5 mgの1日2〜3回投与から始め、効果をみながら徐々に投与量を増やしていく。最大量を1日あたり100 mgとする。

 

2. 何らかの疾患の症候として出現する頭痛

何らかの疾患の症候として出現する頭痛の性質は、原疾患によって異なる。

硬膜下血腫、脳内血腫、くも膜下出血、動静脈奇形、脳腫瘍、髄膜炎などの頭蓋内の疾患が原疾患である場合には、神経学的検査で持続的な所見が認められる。副鼻腔炎、頸椎疾患、顎関節症、巨細胞性動脈炎、緑内障、視神経炎、歯科疾患などの頭蓋外疾患が原疾患である場合には、頭痛以外の原疾患の症状の存在で気付く。抑うつは、毎日起こる治療抵抗性の頭痛の原因としてよくみられる。その他の抑うつの症状の存在を参考にして診断する。

これらの頭痛に対しては、原疾患の治療を行う。