透析百科 [保管庫]

16.9  下痢

A. 下痢の分類

下痢の原因の鑑別は、それが急性下痢であるのか、あるいは慢性下痢であるのか明らかにすることから始まる。

 急性下痢は、暴飲暴食、ウイルス性あるいは細菌性腸管感染症、食中毒によるものが多く、その他、薬剤によるものや虚血性腸疾患によるものなどがある。慢性下痢の基礎疾患には、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病など多数の疾患が含まれる。慢性下痢に関しては成書にゆずり、ここでは急性下痢についてのみ記載する。

 

B. 下痢の診断

 急性下痢で発熱、腹痛、血便を伴い、あるいは周囲に同様の症状を呈する例がみられる場合には、腸管の細菌感染症や食中毒を疑い便の培養を行う。病態が極めて重症である場合には、腸管出血型病原大腸菌O157の可能性も考慮に入れて、血小板減少、LDHの上昇、CRPが上昇して行かないかどうか観察する。

数の上ではウイルス性腸炎が多く、流行状況が診断の参考になる。ウイルス性腸炎で血便をみることは希である。

先行して抗生物質を投与している場合には、偽膜性腸炎や抗生物質による出血性腸炎の可能性を否定してはならない。下剤や胆汁酸製剤の使用により下痢が生じたのではないか検討する必要もある。このような場合には問診が診断に有用である。

 

C. 下痢の治療

下痢の治療には、原因疾患に対する治療、下痢に伴って生じた脱水や電解質バランスの異常に対する補液、下痢そのものに対する乳酸菌製剤や止痢剤の使用などが含まれる。乳酸菌製剤には、ラクトミン製剤(薬)、ビフィズス菌製剤(薬)、酪酸菌製剤(薬)、耐性乳酸菌製剤(薬)があり、止痢剤としては塩酸ロペラミド(薬)が用いられる。

1.薬剤性の下痢
急性下痢では、まず下剤や胆汁酸製剤などの薬剤による下痢、あるいは抗生物質の投与に伴う偽膜性腸炎ではないか検討する。疑わしい薬剤があれば中止する。

2.ウイルス性腸炎
ウイルス感染に対する治療は不要である。下痢に伴って生じた脱水や電解質バランスの異常に対しては補液を行い、下痢そのものに対して乳酸菌製剤および止痢剤を投与する。

3.細菌性腸炎
細菌性腸炎による下痢が疑われる場合には、乳酸菌製剤を投与する。原則として止痢剤や鎮痙剤は投与しない。抗生物質としては、ホスホマイシン(薬)やニューキノロンなどを使用する。

4.随伴症状に対する治療
下痢に伴う腹痛については、止痢剤を使用できる病態では、塩酸ロペラミド(薬)を投与し、止痢剤を使用できない病態では、腹部を保温し、効果が不十分の場合にはペンタゾシン(薬)などの鎮痛剤を投与する。
頻回の排便に伴う肛門痛については、肛門部の温浴を行うとともに麻酔剤を含有する痔疾患用軟膏を用いる。

5.その他の注意事項
便の培養により、腸管出血型病原大腸菌O157、赤痢菌、チフス菌、コレラ菌などが検出された場合には、保健所へ届けると共に専門病院へ急送する。