21.4 アルカリホスファターゼ(ALP)
アルカリホスファターゼ(ALP)は、肝臓、骨、小腸に高い活性が認められ、それらの臓器の疾患で血清中の活性が上昇する。
A. 肝疾患における血清ALP活性の上昇 肝疾患の際には、胆管の通過障害にともなって血清ALP活性が上昇する。胆管の通過障害にともなう血清ALP活性上昇の機序は、うっ滞する胆汁酸の刺激によるALP産生の増大であるとされている。 胆管に通過障害があり、うっ滞する胆汁酸の刺激のためALPの産生は増大するが、ビリルビンは充分に排泄されるため黄疸は認められないことがある。このような所見は、肝内の一部の胆管が高度に閉塞しているか、肝内のすべての胆管が軽度に閉塞している場合にみられる。前者の状態は、肝内に癌、サルコイドーシス、膿瘍、結核腫などの腫瘤が存在するときに生じ、後者の状態は薬剤性肝障害の際に認められる。 B. 骨障害における血清ALP活性の上昇 骨ではALPは骨芽細胞膜に存在し、骨形成の際に血中に流出する。さて、副甲状腺ホルモンなどにより骨芽細胞が活性化されると骨芽細胞から破骨細胞に何らかの信号が送られ、破骨細胞も活性化される。すなわち、骨形成が亢進すると骨吸収も促進し、骨形成が抑制されると骨吸収も低下する。したがって、血清ALP活性は骨代謝回転の指標と理解される。 副甲状腺機能亢進のため骨代謝回転が著しく亢進した状態は、副甲状腺摘出術(PTX)あるいは副甲状腺への経皮的エタノール注入(PEIT)の適応である。したがって、副甲状腺機能亢進を示す副甲状腺の腫大と血清副甲状腺ホルモン(PTH)濃度の上昇、および骨代謝回転の亢進を示す血清ALP活性の上昇があれば、PTXあるいはPEITの施行を検討する。 血清中には種々の臓器由来のALPが混在している。透析患者で、とくに副甲状腺機能亢進にともなう骨代謝回転のおおよその程度を知り、その推移を追跡するのには通常の血清ALP活性を用いるが、骨代謝回転の程度を正確に評価しようとする場合や、低回転骨症例では、モノクローナル抗体を用いたELISA法[1]で骨型ALPを測定する。 C. 血液型がB型あるいはO型の健常人における血清ALP活性の上昇 健常人でも、血液型がB型あるいはO型の人では、大量の脂肪を摂取した後に血清ALP活性が上昇する。この現象に病的意義はないが、血清ALP活性の上昇の意味を解釈するときに役立つ。 D. 血清ALP活性の標準値 血清の総ALP活性の測定法にはいくつかあるが、一般的に用いられているのはJSCC法とIFCC法である。透析患者における血清の総ALP活性の正常上限値と下限値は、JSCC法で104 U/Lと338 U/L、IFCC法では30 U/Lと120 U/Lである。 また、骨型ALPの上限値と下限値は、男性では33.9 U/Lと13.0 U/L、女性では35.4 U/Lと9.6 U/Lである。また、種々の骨疾患の際の骨型ALPの基準値を表に示す。
文献 1. Hata K, et al.: Measurement of bonespecific alkaline phosphatase by an immunoselective enzyme assey method. Ann Clin Biochem 33: 127-131, 1996.
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