透析百科 [保管庫]

7.16  帯状疱疹の診断と治療

1. 疾患概念

帯状疱疹 (Herpes zoster) は、水痘・帯状疱疹ウィルス (VZV;Varicella-zoster virus)によって引き起こされるウィルス感染症である。幼年期に水痘(みずほうそう)に罹患すると、水痘が治癒して後も水痘ウィルスは脊髄後根神経細胞内に不活性の状態でウィルスDNAとして潜伏 する。成人に達した後、ストレスや心労、老齢、抗がん剤治療・日光等の刺激などにより免疫、とくに細胞免疫が低下すると、ウイルスは増殖(再活性化)して、感覚神経節および関連皮膚知覚帯の皮膚に帯状疱疹を発生させる。


2. 症状

通常、発疹が現れる 2〜 3 日前に病変部には、すでに違和感やぴりぴりした痛みが認められる。やがて、知覚神経の走行に一致して帯状に赤い発疹と小水疱が出現する。通常 、発疹と小水疱には強い神経痛様疼痛を伴う。発疹は一側の胸部または腰部領域に生じることが多い。三叉神経領域に帯状疱疹が生じると、髄膜炎、脳炎にいたるおそれが でてくる。目の中に生じると角膜炎や結膜炎を併発し、最終的に失明に至ることがある。

病変は通常、3〜 5 日間をかけて形成され、ほとんどの患者では 2〜4 週間で治癒する。一部の高齢者では持続性あるいは間欠性の激しい帯状疱疹後神経痛が残る。

4% 以下の患者に帯状疱疹の再発がみられる。

 

3. 診断

発疹が出現する前の段階で診断するのは困難である。小水疱が出現すれば診断は容易になる。もっとも直接的な確認検査は、患者の水疱内容からウィルスを分離することである。近年、PCR 法により水痘・帯状疱疹ウィルスの DNA の検出が可能となった。水疱擦過物の塗沫染色標本上に多核巨細胞を証明するツァンク試験(Tzanck試験)は診断に有用ではあるが、帯状疱疹と単純ヘルペスとを鑑別することはできない。水痘・帯状疱疹ウィルスは、モノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法によっても確認できる。

さらに、急性期と回復期で IgG 抗体の有意な上昇を確認する。

皮疹の出現した日を第 1 病日とすると、帯状疱疹では、第 4、5 病日ごろから水痘・帯状疱疹ウィルスに対する IgG 抗体価が上昇し始める。そこで、初診時に臨床症状から帯状疱疹を疑い、初診時と 1 週間後に水痘・帯状疱疹ウィルスに対する IgG 抗体価を調べる(ペア血清)。初診時と 1 週間後 とを比較し、抗体価が 4 倍以上に増えていれば陽性とする。

その他、IgM 抗体を検出することにより診断することもできる(血清学的診断)。

 

4. 治療

しばしば鎮痛薬が必要となる。局所に湿布をすると痛みがいくらか和らぐ。
帯状疱疹の治療の中心はアシクロビル(薬)の点滴静注である。毎日あるいは透析終了時に 2.5 mg/kgのアシクロビルを経静脈的に投与する。

軽症例では、経口的に塩酸バラシクロビル(薬)あるいはアシクロビルを投与する。バラシクロビルは経口投与での生物学的利用能がアシクロビルよりも良好である。

アシクロビルについては1回 200 mg を1日2回経口投与し、透析後には 400 mg を追加投与する。バラシクロビルについては、体重が 55 kg 以上の患者では、透析後に 1000 mg を経口投与し、体重が 55 kg 未満の患者では、透析後に 500 mg を経口投与する。なお、バラシクロビルはアシクロビルのプロドラッグであり、消化管から吸収された後、速やかにアシクロビルに加水分解される。

アシクロビルは腎排泄性の薬剤であり、腎不全患者では体内に蓄積する傾向があるが、血液透析による除去は良好である。アシクロビルの投与中、幻覚、せん妄、錯乱、戦慄、痙攣などの精神・神経症状が現れたら、透析により除去し、その後、減量して再開する。

 

アシクロビル
 ゾビラックス錠
  (200mg錠、400mg錠)
  (グラクソ·スミスクライン、一参天)
 ゾビラックス注
  (グラクソ·スミスクライン、一参天)



塩酸バラシクロビル
 バルトレックス錠
  (グラクソ·スミスクライン)

 

5. ワクチンによる予防

帯状疱疹を予防するワクチン(薬)が開発されている。水痘ワクチンとほとんど同じ成分である。日本で高橋理明先生が開発された乾燥弱毒生水痘ワクチンを米国 Merck 社が自社でさらに 3 代継代したものをワクチンとしたものである。

同ワクチンを数万人の50 歳以上の成人に接種した米国の研究では、帯状疱疹の発症を半分に、帯状疱疹後神経痛への移行を 3分の1にすることができたとのことである。

 

帯状疱疹ワクチン
  
( Herpes Zoster Vaccine)
 Zostavax
  (メルク)

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