7.23 白癬(水虫)
1. 概念 菌糸型の真菌である皮膚糸状菌が皮膚の角層、毛あるいは爪に寄生して生じる疾患である。
2. 発症機序 白癬の発症要因は、まず環境中に白癬菌が存在することである。しかし、我々の住む環境ではいたるところに皮膚糸状菌が存在する。例えば、温泉場、銭湯の足ふきマットにはほぼ100%皮膚糸状菌が存在する。 さて、皮膚糸状菌が皮膚表面に付着した後、角層に進入するのに湿度100%の条件下では1日を必要とし、湿度95%では1.5日を必要とする。しかし、もし角層が傷ついていると、湿度95〜100%の条件下なら約12時間で皮膚糸状菌は角層の中に侵入する。すなわち、角層が傷ついていると白癬に罹患しやすい。
3. 白癬の分類 a.
頭部(浅在性)白癬 b.
生毛部白癬 c. 足白癬 1)
小水疱型 2) 趾間型 3)
角質増殖型 d. 手白癬 手背に出現する白癬では中心治癒傾向のある環状皮疹がみられる。手掌では角質増殖型の病形が多い。 e. 爪白癬 爪甲の肥厚(爪甲下角質増殖)と混濁を主徴とし、種々の変形や崩壊を伴う。 爪白癬は、長い間足白癬を放置しておいた結果、足から爪に皮膚糸状菌が侵入して生じる。足白癬を経ずに、直接に爪の表面から皮膚糸状菌が侵入することは稀である。爪に物理的、病的障害があると、足白癬は容易に爪白癬に進展する。さらに、患者が糖尿病などの免疫不全などを持っていると、足白癬は爪白癬に進展しやすいと考えられている。
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4. 治療 体部白癬、股部白癬には、テルビナフィンなどの抗真菌外用剤(ラミシールクリーム)を1日1回局所に塗布し、これを2〜4週間続ける。その後は予防的に週1〜2回、同じ抗真菌外用剤を局所に塗布する。これにより、白癬の再発を防ぐことができる。 角質増殖型足白癬や爪白癬には、抗真菌外用剤と共にイトラコナゾール(朝食後に50 mgイトリゾールカプセルを2カプセル)やグリセオフルビン(125 mgグリソビン−FP錠を1日3回)などの経口抗真菌剤を投与する。手・足の角質増殖型白癬には最低3ヶ月間、爪白癬には最低6ヶ月間、経口抗真菌剤の投与を続ける。手・足の角質増殖型白癬では、さらに抗真菌外用剤としてアスタットクリームを1日1回局所に塗布するか、あるいはラミシールクリームを1日1回局所に塗布し、その上にケラチナミン軟膏を重層して塗布する。また、爪白癬に対しては、ラミシール液をやはり1日1回局所に塗布する。抗真菌外用剤は足・手の白癬では3〜12ヶ月間、爪白癬では6〜12ヶ月間使用する。 ただし、経口抗真菌剤を服用すると、爪白癬では爪に線状に混濁の残ることがある。このような症例では、さらに経口抗真菌剤を服用し続けても爪白癬は治癒しない。このような例では、爪切やドリルなどで混濁している部分を外科的に除去しなければ完治しない。 イトラコナゾール、グリセオフルビンのいずれも肝排泄性の薬物であり、透析患者でも減量の必要はない。イトラコナゾールとテルフェナジン(トリルダン)あるいはアステミゾール(ヒスマナール)を併用すると、QT延長、心室性不整脈などの心血管系の副作用あるいは肝障害の出現することがある。また、イトラコナゾールはトリアゾラム(ハルシオン)の作用を増強する。 一方、グリセオフルビンには顆粒球減少、白血球増多、消化器症状、肝障害、めまい、頭痛、不眠、精神神経症状などの副作用がある。
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■塩酸テルビナフィン ラミシールクリーム1% (ノバルティス) ■イトラコナゾール イトリゾール ■グリセオフルビン グリソビン−FP錠 ■ラノコナゾール ■尿素 |
5. 白癬の再発 白癬の再発要因には、患者が治療を途中で中断してしまうことであることが多い。抗真菌外用剤を使用し始めてから2、3週間もすると自覚症状がなくなるので、抗真菌外用剤を使用を中止してしまうのである。抗真菌外用剤は4週間以上きちんと使用しないと皮膚糸状菌は消失しない。 白癬の他の再発要因は再感染である。白癬の患者のいる家庭では家庭内に皮膚糸状菌がばらまかれ、再感染する可能性が高い。 |