7.20 肝炎ウイルスの院内感染の予防
B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスは、人から人へと血液を介して伝播する。したがって、これらの肝炎ウイルスの感染に対する対策の第一歩は、肝炎ウイルス陽性患者(キャリアー)をスタッフに周知徹底させることである。
HBs抗原陽性の患者では、HBVの感染力を知るために、HBe抗原とHBe抗体の検査を行う。HBe抗原が陽性であれば、増殖力が旺盛なpre-C野生株HBVが感染していると考える。なお、HBe抗原が陰性化した症例の20〜30%は、pre-C野生株HBVがpre-C変異株HBVに転換したことによるものであり、このような症例は依然として感染源となりうる。 HCV抗体陽性の患者では、HCVの感染力を把握するために、HCV-RNA(ウイルスそのもの)を測定する。HCV-RNAの測定法には、核酸増幅(RT-PCR)を用いる方法とこれを用いない方法とがある。RT-PCRを用いる方法には、さらにアンプリコア(amplicor)定性法とアンプリコアモニター(amplicor monitor)法があり、後者が定量法であって、Kcopies/ml単位が用いられる。アンプリコアモニター法はアンプリコア定性法に比べて感度が劣るため、HCV感染の有無はアンプリコア定性法でおこなう。もう一方のHCV-RNA測定法であるRT-PCRを用いない方法は分岐プローブ法(bDNAプローブ法:bDNA probe法)と呼ばれ、定量法である。単位にはMeq/mlが用いられる。 HCV抗体が陽性であっても、抗体価が低くHCV-RNA(アンプリコア定性法)が陰性の場合には、過去のHCV感染のためにHCV抗体が陽性となったものであり、感染源となる危険性はほとんどないと考えてよい。 3. HBVあるいはHCVのキャリアー患者の取り扱い a. ベッドとスタッフの固定 b. 機器あるいは器具の取り扱い 肝炎ウイルスのキャリアー患者には、専用の聴診器、体温計、血圧計を使用する。患者が使用した機器や器具は、0.1〜1.0%次亜塩素酸ナトリウム液(0.1〜1.0%グルタールアルデヒド液)を浸した綿で清拭する。シーツは患者専用とするか、あるいはディスポーザブル品を使用する。なお、リネン類が血液で汚染された場合には、血液を落とした後に2%グルタールアルデヒド液に30分以上浸しておくか、感染性医療廃棄物として廃棄する。 c. 注射器の取り扱い
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