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7.19  インフルエンザの治療

抗インフルエンザウイルス薬には、塩酸アマンタジン(薬)とリン酸オセルタミビル(薬)がある。前者はA型インフルエンザウイルス感染のみに対して有効であり、後者はA型あるいはB型のいずれのインフルエンザウイルスの感染に対しても有効である。塩酸アマンタジンはA型インフルエンザウイルスに存在するM2蛋白の機能を阻害することによりウイルス増殖を抑制し、リン酸オセルタミビルはその代謝物であるオセルタミビル・カルボン酸がウイルスの増殖に必須の酵素であるノイラミニダーゼを特異的に阻害することでウイルス増殖を抑制する。

塩酸アマンタジンとリン酸オセルタミビルのいずれも、発症後48 時間以内に服用した場合にのみ症状の軽減効果および罹病期間の短縮効果が期待できる。発症から48 時間以上経過していれば、安静臥床、水分と塩分の補給および鎮痛解熱剤の投与などの対症療法のみが適応となる。

塩酸アマンタジンは、健常人では1回50mgを1日2回、5日間服用する。しかし、最長でも7日間以上は服用してはならない。透析患者では1回50mgを1回のみ、あるいは1週間間隔で2回のみ、透析後に服用する。一方、リン酸オセルタミビルは、健常人では1回75mgを1日2回、5日間服用する。しかし、透析患者では(CAPD患者を含む)に対する投与量については、まだ確定されていない。透析患者では1回75mgを1回のみ、透析後に服用するのがよいとの意見がある。

服用したリン酸オセルタミビルは、肝臓にて分子量が410の活生体に速やかに加水分解される。そして、リン酸オセルタミビル活生体の血清蛋白質への結合率は3%以下である。したがって、リン酸オセルタミビルは血液透析にて急速に除去される可能性が大きい。しかし、血液透析によるリン酸オセルタミビルの実際の除去効率に関する報告は見当たらない。したがって、上記の血液透析のリン酸オセルタミビル除去に関する記載は予測に過ぎないことを断っておく。いずれにしても、リン酸オセルタミビルの分子量や血清蛋白質への結合率に関するこれらの記載は、リン酸オセルタミビルは透析後に投与すべきことを示唆する。

しかし、リン酸オセルタミビルは、症状の出現後、できるだけ早期に服用した方がよいことも考え合わせると、インフルエンザと診断した日が、血液透析日なら透析後に服用する方がよく、また診断日が非透析日なら、診断と同時に服用すべきであることになる。この場合、リン酸オセルタミビルの透析量が比較的、高い可能性を考えると、次の透析の後にはリン酸オセルタミビルを追加投与した方がよいように思えるが、これについて触れた報告は皆無である。

塩酸アマンタジンでは耐性A型インフルエンザウイルスが出現し得る。すでに述べたように、リン酸オセルタミビルはA型あるいはB型のいずれのインフルエンザウイルスの感染に対しても有効である。しかし、リン酸オセルタミビルにより耐性A型インフルエンザウイルスは出現するが、耐性B型インフルエンザウイルスは出現しない。

高度の発熱に対しては、鎮痛解熱薬を投与する。ただし、15歳未満のインフルエンザ患者ではジクロフェナクナトリウム(ボルタレン錠、ボルタレン座薬)あるいはメフェナム酸(ポンタール)の投与により死亡率が上昇したと報告されている。これらの患者にはアセトアミノフェン(カロナール錠、アンヒバ坐薬)の投与が推奨されている。これは15歳未満の患者だけでなく、大人の透析患者にも当てはまるかもしれない。大人の透析患者でもインフルエンザ罹患時にはアセトアミノフェンを使用するのが無難かもしれない。

なお、インフルエンザの診断に関しては、別の項で述べる。

 

塩酸アマンタジン

 シンメトレル
    (ノバルティス)
 アマゾロン
    (沢井製薬)
 アテネジン
  (鶴原製薬)
 ルシトン
  (辰巳化学)

リン酸オセルタミビル

 タミフル
  (中外製薬)