3.治療
a.プレガバリン
2010年に痛みに関する神経伝達物質の過剰放出を抑えるプレガバリン(薬)が発売になった。プレガバリンは、除痛効果が発現するまでの時間が短いことが特徴で、長期
的に投与しても持続的な効果が得られることが確認されている。これまで対処できなかった痛みにも有効とされており、欧米では帯状疱疹後神経痛に対する第1選択薬となっている。
一方、国内外の臨床試験では、プレガバリンを服用した患者のうち、64.5%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、浮動性めまい(23.4%)、傾眠(15.9%)、浮腫(10.7%)などであるが、重大な副作用として、心不全、肺水腫、意識消失、横紋筋融解症、腎不全、血管浮腫なども報告されている。
プレガバリンには、ふらつきや眠気などの副作用があるため、高齢者や車の運転をする人に処方する場合には転倒や事故の危険を考慮しなければならない。
プレガバリンは、健常人では1日2回に分けて経口投与する。初期投与量は1日150mg、その後は1週間以上をかけて1日用量300mgまで漸増する。1日最高用量は600mgである。これに対し血液透析患者では、腎排泄がほとんどであるため、投与量を減らす必要
がある。また、血液透析患者ではプレガバリンの1日用量を減量すると同時に、血液透析後には透析で除去された量を追加投与しなければならない。
血液透析患者では、1日1回、1回25mgのプレガバリン量から始め、血液透析後には25ないし50mgを補充投与する。その後は、副作用が生じていないか観察しながら、1週間ごと25mgずつ増量する。そして、1日1回、1回25あるいは50mg、血液透析後には50あるいは75mgを補充することをもって維持量とする。最大投与量は1日1回、1回75mg、血液透析後の補充用量
は100あるいは150mgである。
b.ワクシニアウィルス接種家兎皮膚抽出液製剤
プレガバリンが発売されるまで、日本では帯状疱疹後神経痛の治療薬としてワクシニアウィルス接種家兎皮膚抽出液製剤(薬)が用いられてきた。
ワクシニアウィルス接種家兎皮膚抽出液製剤の鎮痛作用機序として、中枢性鎮痛機構である下行性疼痛抑制系神経の活性化、侵害刺激局所における発痛物質であるブラジキニンの遊離抑制や末梢循環改善等が考えられている。有効率は約50%である。ワクシニアウィルス接種家兎皮膚抽出液製剤は、帯状疱疹後神経痛に対する第2選択薬として使用することができる。ワシニアウィルス接種家兎皮膚抽出液製剤は、1日4錠を朝夕2回に分けて経口投与するか、1日1回ノイロトロピン単位として3.6単位を静脈内、筋肉内、あるいは皮下に注射する。
c.塩酸アミトリプチリン
塩酸アミトリプチリン(薬)は日本では保険適用外の抗うつ薬であるが、早期に投与することにより帯状疱疹後神経痛を予防することができる。とくに60歳以上の患者に対して使用される。
d.オピオイド系鎮痛薬
以上の処置によっても痛みが取れない場合には、麻酔科でがんによる疼痛の緩和にも使われるオピオイド系鎮痛薬が使われることがある。
e.神経ブロック療法
痛みが強い場合にはペインクリニックで神経ブロック療法を行う。神経ブロック療法は早期(2週間以内、遅くとも1ヶ月以内)に行うのがよい。局所麻酔剤や抗炎症薬を痛みにかかわる神経周辺に注入する神経ブロック等が行われる。薬の効果は2〜3時間しか持続しないが、繰り返しブロックすることで痛み
が和らぐ。治療開始が遅れるほど効果が少ない。
神経ブロックには、星状神経節ブロック、三叉神経ブロック、肋間神経ブロック、硬膜外ブロック、神経根ブロック等がある。治療経験の豊富な専門医を受診する。
f.低出力レーザー治療・イオントフォレーシス
一旦、帯状疱疹後神経痛におちいると痛みを完治させることは難しい。痛みを和らげる治療に、低出力レーザー治療やイオントフォレーシス等がある。イオントフォレーシスとは、微弱の電流を体に流し、局所麻酔薬やステロイド剤を浸み込ませて疼痛を緩和させる方法である。