透析百科 [保管庫]

21.12  血清クロール濃度(Cl)

透析前血清Cl濃度の標準値を103 mg/dl前後とする。

血清中のNa+、K+、Ca2+、Mg2+などの陽イオンの総量とCl-、HCO3-、血清蛋白-、その他の陰イオンの総量は常に等しい。したがって、陽イオンの総量からCl-、血清蛋白-、「その他の陰イオン」の総和を差し引けば、HCO3-が得られることになる。腎機能が正常な人では、血清蛋白-や「その他の陰イオン」の量も、K+、Ca2+、Mg2+などの陽イオンの量も、ほぼ一定であるので、血清Na濃度が正常値を示すにもかかわらず血清Cl濃度が高値を示す場合にはHCO3-の減少、すなわち代謝性アシドーシスの存在を示唆している。しかし、透析患者ではリン酸イオンを含む「その他の陰イオン」の量が増大しているので、このような方法により代謝性アシドーシスの存在を推定することはできない。

もし、HCO3-濃度がわかっていれば、陽イオンの総量からCl-、HCO3-、血清蛋白-の総和を差し引くことにより「その他の陰イオン」の量を知ることができる。「その他の陰イオン」はリン酸イオンや硫酸イオン、および乳酸やケト酸などの有機酸のイオンから成り、通常これをアニオンギャップと呼ぶ。

このような陽イオンと陰イオンの関係を数式化することは可能である。したがって、もしこれらの数式を用いてプログラムを作成し、多数のデータをコンピュータにインプットすれば、透析患者の大雑把な血液pHとHCO3-値を算出することができる。

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