21.1 血清尿素窒素濃度(BUN)
透析前BUNは、尿素の産生速度と血液透析による尿素の除去(ダイアライザの尿素クリアランス)および残存腎機能により決定され、尿素の産生速度は蛋白質の摂取量によって決定される。このように透析前BUNは多くの因子によって影響されるので、透析前BUNには他の検査項目におけるような意味での標準値は存在しない。通常の透析(
Kt/V が1.1ないし1.3)を受けており、かつ通常の量(
nPCR にして1.0g/kg/day程度)の蛋白質を摂取している無尿の維持透析患者では、透析前BUNは70ないし90mg/dl程度の値をとる。そこで、この範囲の透析前BUNを、維持透析患者における標準値の一応の目安としてよいだろう。 |
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A. 異常値とその原因 無尿の透析患者では、低い透析前BUNは、理論的には尿素の産生速度が低いことによる場合と透析量が大きいことによる場合とがある。すなわち、透析前BUNが低くても、これは必ずしも透析が十分行えているとは限らないことを意味している。 ただし現在の日本では、極端に低効率の透析を受けている患者も、極端に高効率の透析を受けている患者も少ないように思える。したがって、透析前BUNは通常、透析量(Kt/V)の大小よりもむしろ尿素の産生速度の大小を反映している。
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図1 透析前BUN、nPCRおよびKt/Vの相互関係 |
B.
検査値の理解 透析前BUN、蛋白質異化率(nPCR;透析前後のBUNから求められる蛋白質摂取量の指標)および Kt/V(透析前後のBUNから求められる透析量の指標)の相互の関係を図に示す。図1に示すように、もし Kt/V が一定なら透析前 BUN と nPCR とは比例する。したがって、 Kt/V が一定なら、透析前 BUN と食事による蛋白質摂取量とは比例することになる。 そこで、もし血流量、透析液流量、透析時間およびダイアライザに変更がないなら、透析前 BUN の推移から nPCR の変化を推定することができる。例えば、図2に示すように透析前 BUN がしだいに低下しているなら、nPCR もしだいに低下していると考えて差し支えない。なお、K/DOQI Guidelines 2000 では、nPCR という用語の使用を止め、代わりにnPNA(標準化タンパク窒素出現率;normalized protein nitrogen appearance)という用語を使用している。 |
十分に透析が行われているか否かを判断するには、透析前BUNを指標として用いるよりも、むしろ透析前後の BUN から求められる Kt/V を指標として用いるのがよい。
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図3 透析前BUN、nPCRおよびKt/Vの相互関係 |