21.3 血清尿酸濃度(UA)
尿酸は腎排泄性物質なので、透析患者では血中尿酸濃度が著しく上昇するのが普通である。
さて、痛風発作を繰り返す一般患者では、血中の尿酸値は高値で変動する。このような高尿酸血症の患者において繰り返し起こる激しい急性関節炎、すなわち痛風発作は、結晶性尿酸ナトリウムが結合組織および関節軟骨へ沈着するために生じるものであり、大部分は遺伝性である。 通常、透析患者も高尿酸血症を示すが、痛風の遺伝的素因をもつ者以外で痛風発作を認める者は希である。そこで、透析患者に認められる高尿酸血症を薬物で是正すべきか否かに関しては一定の見解は得られていない。とくに尿酸合成阻害薬であるアロプリノールの代謝産物は腎排泄性であるため、痛風の遺伝的素因をもたない透析患者への投与には躊躇する。しかし、高尿酸血症は動脈硬化の危険因子のひとつでもあるため、透析前血清尿酸値が12 mg/dlを越えるような高尿酸血症では、血清尿酸値を低下させるための努力をすべきであろう。 A. 異常値とその原因 透析患者における著しいな高尿酸血症は、尿酸の産生を増大させる高蛋白食、プリンを多く含む魚肉類の臓物の摂取、アルコールの多飲などよって生じる。透析時間が極端に短かったり血流量が極端に低いという特殊な状況でない限り、高尿酸血症の原因が透析不足である可能性は少ない。 B. 治療方針と患者への指導 透析患者が透析前血清尿酸値が12 mg/dlを越えるような著しいな高尿酸血症を呈している場合、もしnPCRが1.1 g/kg/day以上であったら、これが1.1 g/kg/dayとなるように蛋白摂取量の制限をおこなう。また、魚肉類の臓物の摂取が多いようなら、これを制限する。さらに、もし透析不足が疑われるなら、透析時間を延長し、あるいは血流量を増大させて透析量を増やす。 これらの指導や処置によっても高尿酸血症が是正されない場合には、尿酸合成阻害薬であるアロプリノール(薬)の投与を検討する。アロプリノールは、毎透析後に100 mgを投与する。 ただし、たとえ血清尿酸値が12 mg/dl未満であっても痛風発作が認められる場合には、血清尿酸値を低下させるためアロプリノールを投与する。 なお、透析患者では尿酸排泄促進剤であるベンズブロマロン(商品名:ユリノーム、ムイロジン)を投与してはならない。
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