21.23 CA19-9
1. CA19-9とは
上皮細胞で合成され、遊離して赤血球膜に吸着される糖脂質にLewis A抗原(Lea抗原)とLewis B抗原(Leb抗原)がある。Lea抗原とLeb抗原は、すべての人で合成されるのではない。Lea抗原とLeb抗原の両方が合成される人、Lea抗原のみが合成される人、Leb抗原のみが合成される人、Lea抗原とLeb抗原のいずれも合成されない人がいる。すなわち、赤血球の膜表面にLea抗原とLeb抗原の両方が認められる人、Lea抗原のみが認められる人、Leb抗原のみが認められる人、Lea抗原とLeb抗原のいずれも認められない人の4種類の人に分けられる。このように赤血球膜上のLea抗原とLeb抗原の有無により赤血球を4つのタイプに分類するのがルイス式血液型である。
さて、膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌、胃癌、大腸癌などでは、糖鎖部分がシアル化されたLea抗原(シアリルLea抗原)が異常発現することが知られている。CA19-9の本体はこのシアリルLea抗原であり、したがってCA19-9の測定はこれらの癌の診断に利用される。
なお、日本人の5〜10%ではLea抗原が合成されない。このような人ではLea抗原そのものが存在しないのであるから、Lea抗原の糖鎖部分のシアル化も起こりえない。したがって、このような人ではたとえ膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌、胃癌、大腸癌があってもCA19-9は検出されない。
2. 種々の癌におけるCA19-9の陽性率
CA19-9は、膵臓癌の80〜90%、胆嚢癌の70〜80%、胆管癌の70〜80%、胃癌の30〜40%、大腸癌の20〜40%で陽性となるとされている。そこで、CA19-9の検出はこれらの癌の診断に利用される。
なお、CA19-9は肺癌、乳癌、慢性膵炎などでも陽性を示すことがあるので、CEA、AFPと組み合わせて診断に利用する。
3. CA19-9の基準値
腎機能正常者の基準値は37 U/ml以下、透析患者の基準値は76 U/ml以下である[1]。
文献
1. 大平整爾、他:慢性透析患者における各腫瘍マーカー測定値の検討. 透析会誌. 24: 475-483, 1991.