21.19 脳性Na利尿ホルモン(BNP)
脳性Na利尿ホルモン(BNP)は、心房性Na利尿ホルモン(hANP)と構造的に類似のNa利尿ホルモンである。BNPは最初、脳で発見されたが、その後、心室にも存在することが明らかになった[1]。
健常人では、血漿BNP濃度は血漿hANP濃度の20%に過ぎないが、うっ血性心不全の患者では血漿BNP濃度は血漿hANP濃度に等しいか、むしろ血漿hANP濃度よりも高くなっている。そこで、血漿BNP濃度は、血漿hANP濃度よりもうっ血性心不全の診断に有用であると考えられている[2]。実際、症状を呈しないうっ血性心不全患者でも血漿BNP濃度は著明に上昇している[3-5]。
?度 | 心疾患は存在するが、通常の肉体運動では症状が出現しない |
?度 | 安静時には快適であるが、通常のレベルの肉体運動をおこなうと倦怠感、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛が出現する |
?度 | 安静時には快適であるが、通常以下のレベルの肉体運動でも倦怠感、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛が出現する |
?度 | 安静時にも心不全症状あるいは狭心症症状があり、どのようなレベルの肉体運動でも倦怠感、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛が増強する |
さて、心筋からのBNP分泌は、心室の拡張期圧が高い場合に亢進する。ところが、心室の拡張期圧はうっ血性心不全の場合だけでなく、循環血液量が増大している場合にも上昇する。したがって、血漿BNP濃度は血漿hANP濃度と同様に循環血液量の増大、すなわち溢水によっても上昇する可能性が高い。
そこで、血漿hANP濃度と血漿BNP濃度を同時に測定して、血漿BNP濃度からみてうっ血性心不全が存在しないようなら、hANPの血漿濃度が高値であることをもって溢水がある、すなわちドライウエイトが高すぎると判断しようとの考え方には無理があるように思われる。
文献
1. Mukoyama M, Nakao K, Hosada K, et al: Brain natriuretic peptide as a novel cardiac hormone in humans. Evidence for an exquisite dual natriuretic peptide system, atrial natriuretic peptide and brain natriuretic peptide. J Clin Invest 1991; 88:1402.
2. Maisel A: B-type natriuretic peptide levels: diagnostic and prognostic in congestive heart failure: what's next?. Circulation 2002; 105:2328.
3. Lerman A, Gibbons RJ, Rodeheffer RJ, et al: Circulating Nterminal atrial natriuretic peptide as a marker for symptomless leftventricular dysfunction. Lancet 1993; 341:1105.
4. Motwani JG, McAlpine H, Kennedy N, Struthers AD: Plasma brain natriuretic peptide as an indicator for angiotensin-converting-enzyme inhibition after myocardial infarction. Lancet 1993; 341:1109.
5. McDonagh TA, Robb SD, Murdoch DR, et al: Biochemical detection of left-ventricular systolic dysfunction. Lancet 1998; 351:9.